「赤ちゃんできちゃった」
「はあ!?」
「ごめん仁……」
「いや、まあ、いいんだけどさ。謝るべきはこっちっつーか…、まじわりーな。
で、いくらかかるんだっけ?」
「何が?」
「おろすのにかかる金額」
「……あたし生みたい」
「は?ちょっとお前何言ってんの」
「だから生みたいの」
「いやいやいや、まじ意味わかんねーから」
「仁、」
「お前俺の仕事分かってんだろ?デビューしたばっかだし今は無理だって。つくれる時になったらまたつくればいいじゃん」
「なにその言い方!信じらんない…」
「つーか結婚だってできねえってのにどうしろって言うんだよ!」
「仁は何もしてくれなくていいよ!あたしは絶対この子を生む」
「ふざけんな、この時期にスキャンダルなんか出回ったら困るんだよ!んなこともわかんねーの!?」
「スキャンダル!?じゃあ仁はこの子を殺せって言うの!?最低!!人殺し!!」
「……っは、ふざけんなよ。もういい好きにしろ。その代わり二度と俺の前に現れんじゃねーぞ。俺とお前は今から他人だ。じゃーな」
喫茶店のテーブルに1000円札を叩きつけて席を立った
大好きだった すげえ好きだった。
でもこの時の俺にはやっとデビューという夢が叶って、もっと仕事がしたい時期で
俺は仕事のためにを捨てた
これが俺とあいつの終わりだった
「撮影以上です!お疲れ様でしたー!」
あれから4年
のことを思い出すことなんかもうほとんどなくて、あの時にできたガキのことだってすっかり忘れてた
撮影が終わってスタジオを出る
次の仕事まで時間のあった俺はスタジオ近くの喫茶店に入った
窓際の席についてアイスコーヒーを注文し、窓の外を見る
以前にも見たことがある気がする外の景色
俺この店入ったことあったっけ?
思い出せねーな
思い出せないモヤモヤ感が気分悪くてタバコをくわえて火をつけた
「んだよ、灰皿ねーじゃん」
隣の席を見ると灰皿が置いてあって客がタバコを吸っている
俺の席だけ置き忘れてんのかよ、
「あの、灰皿ないんすけど」
店員のとこまで行って灰皿を受け取る
席に戻ろうと一歩踏み出すと走ってきた子供が俺の足につまづいてすっ転んだ
「うわああああん!!」
「うわ、おい大丈夫か?」
「いたああああいいい」
「おい泣くなって、な?」
つーかどう考えてもこんな狭いとこ走るお前が悪いだろ!
そんなことを考えながらとりあえずガキの頭をぽんぽんしてると後ろから声がした
「あっ、うちの子がすみません。ただの泣き虫なので大丈夫ですよ」
「ママっ!隼人は泣き虫じゃないもん!!」
「じゃあ早く泣き止まなきゃ」
聞き覚えのある声にハッとして振り返った
また会ってしまうなんて
神様ってのが本当にいるならふざけたことをして下さる
「……?」
「え…、仁…、、」
そこにいたのは、だった
「うそ…、仁なの…?」
「あ、まあ、、、久しぶり」
気まずそうに笑った俺をはじっと見つめて、それから笑った
綺麗だった
笑顔が?雰囲気が?
何がって言われたら答えられないけど、今俺の前にいるが以前の何倍もきれいなのは確かだった
「ごめんね。隼人、帰ろ」
「ママ、いいの?」
「うん、行こ」
じゃあね、そう言っては笑って喫茶店を出ていった
「にガキか〜、結婚してたなんて意外だな」
そう呟いて席に戻った
この時の俺はなんも気付かないバカだったんだ
**
「もしもしー」
「あ、かめー?俺ー」
「なに、赤西から電話なんて珍しい」
「あのさ、って覚えてる?俺が亀に紹介してもらった女」
「まあ幼なじみだし覚えてるけど、、、なんで?」
「今日たまたま会ってさー。ガキ連れてたんだよ。いやー、まじ驚いた」
「あっそ…」
「でさ、ガキの名前なんつうと思う?隼人っつうんだぜ。のやつ隼人ってぜってーごくせんからつけたと思わね?(笑)俺の役名つけるとか意外にまだ俺に未練あったりしてな(笑)」
「……お前さ、」
「ん?」
「いい、なんでもない。じゃ、もう寝るから切るわ」
「おう、わりーな。」
電話を切って携帯をベッドに放り投げた
まさかにガキがいたとはなー
4〜5年会わないだけで人って変わるもんだな
そう思ってると自然と眠りに落ちていった
あれから1ヶ月程経った
俺は個人の仕事を終えて帰ろうとするとマネージャーに呼び止められ、亀に渡しておいてほしいと荷物を渡された
「あ、俺。赤西だけど。」
「悪い、今日ちょっと忙しいんだ」
「あー、すぐ終わっからさ。とりあえず開けてくんね?」
亀のマンションに着いて、オートロックを開けてもらい部屋に入る
亀の家来んのなんてまじで何年ぶりだろ、確実にここ5〜6年は来てない
亀の家はわりと物が少なくて、きれいに片付けてあった
「あ、これ。マネージャーから。」
「おう、さんきゅ」
「ま、それだけなんだけどな。俺完全にパシリだし(笑)じゃ、帰るわ」
―ピンポン
「あれ、誰か来たけど。ま、俺もう帰るからついでに出るわ」
「いや、赤西ちょっと待って」
「は?お前俺を引き留めてどーすんだよ(笑)じゃーな」
ガチャ、
外に出ようとドアを開けると、見覚えのある姿があった
ふと視線を上げた彼女と目が合う
「……、」
「え、なんで……?」
驚いた顔をした彼女の腕の中ではあの隼人とかいうガキが眠ってて
「え、何。お前らできてんの?(笑)このガキって亀の子供なわけ?」
「ちげーよ」
「別に俺に隠すことねーじゃん(笑)いや、まぁの旦那が亀なら俺も元カレとして安心だわ(笑)あれ、お前らって結婚はしてんの?」
「するわけねーだろ、」
「ま、そうだよな(笑)でもいずれすんだろ?」
「…赤西まじでふざけんな」
「は?何がだよ」
「俺とができてるってまじで思ってんの?んなわけねーだろ。」
「お前何怒っちゃってんの?がお前ん家来てんだから誰でもそう考えんだろ。ちげーんなら何なんだよ」
「隼人はお前の
「和也やめて!!」
亀が何か言おうとした時、が亀の腕を掴んで強くそう言った
の必死な表情に亀も何も言わなくなる
「なんだよ」
「なんでもない」
「言えよ」
「赤西に言ってもどうせ意味ねーし」
「は?隼人は俺のなんだっつうんだよ」
「………」
俺が亀を睨んでそう言っても亀は全く答えようとしなくて
チッ、と舌打ちして帰ろうとすると、が口を開いた
「隼人は、…仁の子です」
「………え?、今なんつった?」
「隼人は昔仁と付き合ってる時にできた子なの、」
「は?」
「きっと仁は覚えてないよね、あたしなんて一時期付き合ってただけの彼女なんだもん」
「………いや、のことは覚えてっけど…」
「あたしがこの子生みたいって言ったら仁におろせって言われたの。それから俺の前に二度と現れるなって」
思い出した。
ああ、と再会した喫茶店は俺らが別れた場所だ
つーか、がガキのこと隼人って呼んでる時点で気付けよ俺
こう聞くと俺ってなかなか最低だな、自分の最低っぷりに笑えてくる
「でもね、あたし仁のこと少しもうらんだりしてないの。あの頃は最低って思ったりもしたんだけど、今では感謝してる。だって、隼人に逢わせてくれたんだもん」
「………、」
は優しく微笑んで眠っている隼人の前髪を軽くかきわけた
こんなに幸せそうなの顔、初めて見た気がする
付き合ってた頃にだってこんな顔は見たことがない
どうしていいかわからなくなった俺が亀を見ると、亀はコンビニ行ってくると言っていなくなってしまった
「………、ごめん」
「…………え?」
「俺、とりあえず今日は帰るわ。………じゃーな、」
自分がにしたことへの後ろめたさと情けなさでいたたまれなくなって、の目もろくに見ずに亀の家の前から立ち去った
実際、があの時できた子どもをどうしたかなんて考えたこともなかった
けどがせっかくできた命を殺すわけないってのはちょっと考えればすぐに分かることで
俺に認知しろとも結婚しろとも言わずに子どもだけ生ませてほしいと言ったにおろせって言ってしかも俺の前に二度と現れんなって言うなんて最低にもほどがある
でも、今さら俺にできることなんて何もないわけで
もう何も考えたくなかった俺は足早に自分の家に向かって眠りについた
次の日の朝仕事に行くと、楽屋には亀がいた
「お前さ、と隼人のことこのまま何もなかったことのようにすんの?」
5分程度の沈黙の後、亀が俺にそう言った
まあ、今日は亀になんかしら言われるとは思ってたけど、あまりの直球に少し驚く
俺が「今さら俺にできることなんてねーし」って言うと、亀は「のそばにいてやってほしい」って言った
「は?俺とはもう4年も前に終わってんだけど。だってそんなの望んでねーだろ」
「は今でもお前のことが好きだよ」
「またまたー、亀ちゃん何言っちゃってんの 笑」
「隼人が前に俺に言ったんだ、『ママはじんってひとがすきみたいなの。はやとはだいすきなじんとのこだからぜったいまもるよってママがよくいうの。かめ、じんはどこにいるの?』って。」
「………」
「は俺に直接赤西のことを話したりはしないけど、やっぱりはまだお前のことが好きなんだよ」
「けど俺そんなこと言われたって無理っつーか、結婚だってまだする気ねーし…」
「結婚なんてしなくていい。ただ、が弱ってるときにそばにいてやったり、が隼人の育児で疲れてるときに声をかけてやるだけでいいんだ。それだけでは…」
「そんなに言うならお前がを支えればいいじゃんよ。お前どーせのこと好きなんだろ?お前なら俺よりしっかりしてるし」
「俺じゃだめなんだよ!!!俺はにとってただの幼なじみなんだよ、、、俺じゃを幸せにできない」
「んなのわかんねーじゃん。今優しくしたらお前にコロっといくかもしんねーし」
「がそんな奴じゃないってことはお前もわかってんだろ…?には赤西じゃないとだめなんだ」
「無理だ俺には。俺みたいな奴はなんかを幸せにできない。ガキの面倒だってろくに見れねーし、めんどいこと嫌いだし。俺はガキを育てるのに向いてねーんだよ、」
「向いてるとか向いてないとかじゃねーだろ?にはお前が必要なんだ、赤西がただのそばにいてくれるだけであいつは十分なんだよ。はしっかりしてるし、きっと隼人を十二分に愛してちゃんと育てることできるよ。でも、のことは誰が守るんだよ、のことは誰が愛してあげるんだよ!………赤西……………、頼むよ、、、」
「……うるせーよ………」
そう小さく呟いて楽屋を出た
あんな亀と2人きりで楽屋なんかにいられない
俺は亀と違って無責任だし女にだってだらしないし、実際もうとの関係だって終わってるわけで、こんな状態でのそばにいたって何の力にもなれない
でも、過去の自分がしたことの責任として、が求めるなら支えになってやらなきゃって思わないこともない
けど、だったら、俺より亀のほうがのことを大事にできるし、支えになってやれるんじゃないかって思う
こう思うのは間違ってるだろうか
仕事を終えて自宅に帰ると、マンションのエントランスに珍しく誰かがいるのが見えた
自分に関係ないだろうと思い特に確認することもせず、ハットを深くかぶりなおしてその前を通りすぎる
すると、その人は俺に近づいてきて、俺の前で止まった
「仁…」
「え、、?お前なんでここに、、」
「和也にお願いして教えてもらったの。あの…昨日はごめんなさい、仁は気にしないでいいから。」
「あ、ああ……。ちょっとうち入ってくんない?」
「ううん、ここでいい。仁に一言気にしないでって言いに来ただけだから」
「いや、俺がここじゃまずい。誰か来たらやばいからとりあえずうち上がって」
エントランスでこんな話して誰かに聞かれたらたまったもんじゃない
を家に上げるのはどうかと思ったけど、とりあえず上がってもらうことにした
マンションのエレベーターに2人で乗る
20階以上上がる間の長い沈黙が気まずくて「今日隼人は?」と訊いた
「今日は和也に預かってもらってる。隼人も和也になついてて」
「へえ、そうなんだ」
「和也にはいつも迷惑かけちゃって申し訳ないって思ってるの。ただでさえ普通のお仕事とは違って大変で疲れてるのに、和也はいつも隼人の面倒みてくれて…」
「そ、、、」
エレベーターを降りて自分の部屋の鍵を開け、を中に入れる
とりあえずを適当に座らせて、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して渡した
「ありがとう。別に気遣わなくてもいいのに…」
「いや、別に」
と2人きりなんてだいぶ久しぶりで何を話していいのかいまいちわからない
こうやってよく見るとは本当にきれいになっていて、それでいてあの頃の可愛さも残っていて、当時の俺はこんないい女をフるなんて脳みそ腐ってたんじゃないかって思う
俺がをじっと見てるのに気付いたのか、は口を開いた
「昨日はごめんなさい。生むときに仁には絶対もう会わないって決めてたのに…仁には絶対言わないって決めてたのに…。仁に迷惑をかける気はないの、あたしはただ隼人と一緒に生活できればいい。だから仁はあたしたちのことは気にしないで」
「俺さ…、今日亀に言われて考えたんだ。、携帯ある?」
「え?あるけど…」
「ちょっと貸して」
「え?」
「いいから貸せ」
から携帯を受け取って、俺の電話番号を登録した
俺の携帯にもの番号を登録する
「何かあったら俺に電話して。亀にばっか迷惑かけんな」
「でも、」
「俺にだって責任はあるわけだし、隼人が俺の子供ってわかった以上何もしないわけにいかねーじゃん」
「………」
「まじで少しぐらい頼ってくれたっていいから」
「………、」
俺を見たの目から涙がこぼれた
この俺の行動には自分でも驚いてる
まさか俺がこんなこと言うなんて
でも思っちゃったんだ、の力になれたらって
俺が今までしてきた最低なことの分がこれでチャラになるとは思ってないけど、を守ってやらなきゃって
きっとだったからそう思えたんだ
***
ppppppp……
たまたまオフで家で過ごしてたら携帯が鳴った
画面を見ると『』の文字
から電話がかかってくることは初めてで、俺は急いで電話を取った
「もしもし?」
「あ、です。今大丈夫…?あの…お願いがあって……」
「おう、何?」
「今日の夕方、隼人を保育園まで迎えに行ってもらえないかな…。残業になっちゃって…」
「え?お前仕事やってんの?」
「いつもは隼人を保育園に預けてる昼間だけなんだけど、今日は夜交代の人が遅れるらしくて…。和也にお願いしようと思ったらドラマの撮影で地方に行ってるみたいで…。あたしの両親はもう亡くなってるし、頼るとこがないの……っ、」
「え、泣くなって。隼人は俺が迎えに行くから、な?」
「ありがとう…。ごめんなさい…」
あれからに隼人の保育園を聞いて、俺が迎えに行くことになった
俺の仕事柄保育園に子供を迎えに行くのはまずいって思ったんだけど、保育園の先生はおばちゃんばっかだから大丈夫って言われて
お迎えのピーク時間を30分程越えた頃、保育園に向かった
「すんませーん、隼人を迎えに来ましたー」
隼人のクラスというひまわり組に行くと、隼人が先生らしき人と一緒に積み木で遊んでた
隼人は俺のことを見ると「じん……?」と小さく言って俺のほうにゆっくり寄ってきた
隼人を抱き上げようとすると、隼人と一緒にいたおばちゃん先生が俺と隼人の間に入ってきた
「あの、遅くなってすみません。隼人を迎えに来ました」
「失礼ですが、どちら様でしょうか?今まではお母さんか亀梨さんという方がお迎えに来てたのですが…」
「赤西仁です、今日は2人が都合つかなくて来れないみたいで」
「隼人くんとのご関係は?」
「……父親です。」
俺がそう言うと、その先生は一瞬驚いたような顔をした
それから隼人に「この人は隼人くんのパパなの?」って訊く
すると隼人はすごい笑顔で「パパだよ。ママはじんがだいすきなの!」って答えた
その一言で先生の疑いは晴れたらしく、俺に隼人を抱かせて「隼人くん、また月曜日ね」と言った
隼人も先生に向かって「さようなら」って言って手を振る
俺は軽く会釈をして保育園を出た
抱っこしている隼人との距離が近くてなんだか気まずくて(隼人は歌うたってるし、そう思ってるのは俺だけなんだろうけど)
隼人を助手席に乗せるとシートベルトをしめて車を発車させた
「隼人さ、俺のこと分かんの?」
「わかるよ、ママはよくじんのおはなししてくれるんだー」
「どんな話?」
「じんはおうたがじょうずで、いっつもきらきらしたところでうたってるんだよーって。おどりはへたっぴだけど、でもいっちばんじんがかっこいいのって!はやともそうおもうよ!じんかっこいい!」
「さんきゅ 笑」
俺のマンションに着いて、隼人を部屋に入れる
子どものためのもんを何も置いてないことに気付いて、隼人のほうを見てみると隼人は自分のリュックからお絵かき帳とペンを出して絵を描きだした
「隼人って今何歳なの?」
「はやとはね、3さいだよー!じんは?」
「俺?俺はね、26歳」
「へー!ママより1こおおきいんだねー」
「まーな」
「♪〜♪〜♪〜」
「お前さ、人見知りとかしねーんだな」
「ひとしみり?」
「なんでもない 笑」
隼人は絵を描くことに飽きたみたいで、お絵かき帳とペンをリュックに片付けるとソファーに座ってテレビを見てた俺の隣に来た
ただ、俺の隣に座って俺の顔をじっと見る
俺が「どした?」って訊くと、隼人は「じんはママとはやとのことがきらいなの?」って言った
「なんで?」
「だってじんはいつもいっしょにいてくれないから…」
「別に嫌いじゃねーよ、」
「じゃあすきなんだね!よかったー!」
勝手にそう解釈して喜ぶ隼人
若干身勝手なとこは俺に似たんだろうか、そう思う俺は確実に数時間前よりも隼人のことがかわいくてしょうがなくなっていて
自分の子どもだって思うとこんなに違うもんなんだろうか
俺が隼人の頭をなでてやると、隼人がまた口を開いた
「はやともね、じんのことすきなんだよ」
「なんで?」
「ママもじんのことがすきだから、はやともじんのことすきー」
くしゃって目尻に少ししわを寄せて笑って隼人はそう言った
こんなにしっかりした子が俺の子だなんてまだ信じられない
それから1時間程度隼人としゃべってると、家のチャイムが鳴った
「仁……ごめんなさい、」
「いや、別にたいしたことしてねーし。とりあえず上がって」
隼人を迎えにきたを家に上げると隼人は嬉しそうにに抱きついた
それから楽しそうに今日保育園であったことをに話す
しばらくすると、隼人は疲れたみたいで眠ってしまった
「本当にありがとう…、助かった…」
「もっと頼れっつったのは俺なんだし気にしなくていいから」
「隼人の相手するの大変だったでしょ?隼人わがままだから」
「わがまま?全然わがままなんて言わなかったけど」
「え?そうなの?隼人、緊張してたのかな」
ソファーで眠ってる隼人を愛おしそうに見つめながらそう言う
眠った隼人の顔はにそっくりで、俺の胸をなぜだかキュッとさせる
それに隼人を見つめるはすげえきれいで、俺は一瞬から目が離せなくなった
「隼人に言われたんだ、仁はママと隼人のことが嫌いなの?って」
「え……、」
「俺が嫌いじゃねーよって答えたら、じゃあ好きなんだねって喜んでさ。なんつーか…、まだ子どもの隼人にそんなこと思わせてた俺って最低だなって思って。それからさ、隼人も仁のこと好きだよって言われたんだ、」
「………」
「なんでって聞いたらママが仁のこと好きだから隼人も仁のことが好きって。……俺さ、が望むなら一緒に
「それ以上言わないで、、、お願い、、」
「え?」
「隼人を生むときに決めたの、仁に迷惑をかけるようなことは絶対しないって。今日は頼っちゃったけど、これからはできるだけ自分でどうにかする。あたし、仁のお荷物になりたくないの…」
「別に荷物だなんて」
「あたし、仁との子どもを授かれたことだけでもう十分なほど幸せなの。だからもう放っておいて…」
うつむいてそう言う
床にはの涙がぽつっ、と零れた
の泣き虫はあの頃からちっとも変ってないらしい
「俺さ、まだ好きみたいなんだ…、のこと」
「………」
「俺がお前のそばにいたい。それだけじゃのそばにいるための理由として足りない?」
「そんな……」
「俺がと隼人を守りたい」
俺がこんなクサイ台詞並べることなんてもう一生ないだろう
こんな勝算のない賭けだって今までの俺なら絶対しない
でも、これからの俺には仕事よりも夢よりも、何よりも2人が大切だってそう思う
将来、俺以外の誰かが2人のそばにいるなんてのは嫌だ
「俺と、もう一度やり直してもらえませんか?」
「仁……後悔しない…?」
「と隼人がいるんだからするわけねーじゃん」
「………ありがとう、お願いします」
そう言ったを抱き寄せる
久々のの感覚に少し緊張して、そのままゆっくり口づけた
それから数日経って、と隼人を俺のマンションに住ませることにした
の仕事も辞めさせて、俺の家で隼人の育児に専念してもらえるようにした
まだ籍は入れたりしてないけど、多分そのうち入れることになると思う
一緒に住み始めて俺に慣れてくると隼人はすっげえわがままになって、今じゃ俺とケンカする時は必ずと言っていいほどゾウのぬいぐるみかキリンのぬいぐるみが俺の顔面めがけて吹っ飛んでくる
と俺と言えば、最初の頃こそなんだかぎこちなかったけど、最近では昔付き合ってた頃のように自然に笑ったりできるようになったし、2度目の恋に落ちたような俺たちは昔以上に幸せで楽しい毎日を過ごせるようになった
離れてた時間の分、俺は2人をもっと大切にするし、ずっと守ってく
と隼人の名字が赤西に変わったのは、それから半年後の隼人の誕生日だった。
***あとがき****
長い!!!!!!!!!!!!!!!!!
これ長編にしようかなーって思ったんだけど、また完結できない可能性高いから短編にしてみました。しかし長い!!!かなり展開早くしたのにそれでも長い!!!
これはね、パパとママときみとの番外編的なノリなんでよろしくですー
仁ちゃんの子どもとの絡み……想像しただけでにやけます!
最近あたしの周り結婚出産が多くて子どもが可愛くって可愛くって…!
そのせいで親子もの増えちゃうんですよねー 笑
→ランクリする!
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