マスターマインド
俺の彼女はすぐ怒る。
目がキリっとつり上がって、俺を睨みつけて。
今日の帰り道だって、学校横の土手を歩いてる時に急に彼女が口を開いた。
「あたしに言わなきゃいけないことあるでしょ」
俺より20センチ以上も小さいその体で俺を見上げて、じっと睨みつける。
あ、いつもより制服のスカート短ない?
てかなんで最近Yシャツ第二ボタンまで開けとんの?
男子どもがどんな目でのこと見るか…。あとで注意しとこ。
「え?ないよ、なんも」
「うそ」
「ないって、ほんま。どーしたん?」
「だってあたし知ってるもん」
「え?」
「あたし知ってるもん!」
「え、何を?」
「告られたんでしょ、に」
「え…あー…まあー…、俺モテるからなー(笑)」
「ふざけないで、」
「……うん」
「で?」
「で…?」
「それで忠義はどうしたんですか」
「それで僕はどうしたんでしょう」
「いい加減にしてよ!」
わお、ちょっとびっくりした。
毎回毎回可愛い顔してすごい大声やな。
まったく俺の制服の胸倉なんか掴んじゃってさ。
女の子なのにすごい威勢がいいんです。
「ごめん、ちょお考えさせてって言うた」
「考えさせてって何!?あたしたち付き合ってるんじゃないの!?」
「付き合うてるよ、もちろん」
「ならなんで考えさせてなんて返事したの!?」
「いや、すぐ振ったら可愛そうちゃうかなって」
「なにそれ!!彼女がいるのにそんな返事おかしいじゃん!馬鹿じゃないの!!?」
「や、だってな」
「が可愛そうとかそんなの忠義は関係ないじゃん!」
「や、でもな、」
「意味わかんない!!あたしのこと嫌いになったの!?」
「ちゃうって」
「じゃあ何!?そうやってさ、忠義は曖昧で思わせぶりな態度するからさ、女の子は」
「え、ちょ、なんで」
「思わせぶりな態度するから女の子は忠義のこと」
「な、泣くなって」
「泣いてなんかないし!」
そのくせ泣き虫で、怒りながらこうやって泣いちゃったりもする。
目に涙溜めて、それでも決まって彼女は泣いてないなんて言う。
怒りんぼの強がり泣き虫さんにオプション機能で素直さはついてないみたいや。
だから俺はその度に両手を広げて、俺の胸に飛び込んでくるを抱きしめてやる。
そうすれば彼女は、
「ほら、おいで。」
「……帰る。」
「……え?」
「あたし帰るから。」
「え?俺の胸に飛び込んで来おへんの…?」
「そうやってればいつもあたしがおとなしくなるとでも思ってんでしょ。馬鹿じゃないの」
「いやー…(あかん、バレてた)」
「馬鹿。最低」
「待ってって」
「ついてこないで」
「待てって」
「やだ。ついて来ないでって言ってるでしょ。ストーカー。変態。」
今日の彼女はいつもと違うみたい。
学校横の土手を一生懸命大股で歩いてく彼女。
ま、実際のところすぐに追いついてまうのは目に見えてるんやけど。
だから俺もいつもと違って、追っかけて後ろからを抱きしめた。
それから一言、
「俺にはだけおってくれれば十分やもん」
カッコよく決めてみれば彼女はきまって
「…………んふ、」
ほーら、機嫌は元通り。(顔は見えないけどね)
きっと嬉しくてニヤニヤしてるんやでは。
「今笑ったやろ?」
「うるさい」
「………ぐっ…ひじはあかんやろ……いたい…、」
「調子に乗るな馬鹿忠義」
俺のみぞおちにひじで一発食らわせて、彼女はまた歩き出してしまった。
でも大丈夫。きっともう怒ってない。
だってほら、
「早くしてよ忠義!置いて帰っちゃうよ!!」
こうやって止まって振り返って、俺を待ってる。
俺がのとこに走っていけばの怒りんぼさんはどっかにいっちゃうんや。
「手つないで帰る?」
「忠義がつなぎたいならいいよ」
「ならつなごーっと」
いつだっての気持ちはわかるんやもん。
ほら、ぎゅーって握ったこの手が仲直りのしるし。
「あ、さっき気付いてんけど、スカート短くしたやろ」
「うん、ちょっとすそ切った」
「しかもボタンも2個も開けとる」
「うん♪」
「明日から元に戻してな♪」
「………。」
「(無視……?)」
***あとがき****
即興で仕上げたこの作品。
短いうえにワンシーンのみ。
高校生の大倉君は女の子よりも1枚上手な設定w
すぐプリプリする彼女を優しくなだめる大倉君……すてきw
ま、彼女が怒る原因はきっと全て大倉君のせいなんですよね。わかります。←
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