「村上くん、おつかれさま!」


サッカー部の練習が終わってグラウンドから部室に戻ろうとすると、誰かに声をかけられた。

声のほうを見てみると、見慣れない顔の女の子がこっちを向いて立っていた。



始まりの






彼女はサッカー部の新しいマネージャーらしい。

そういえば部活前に自己紹介しとった気がする。

学校のジャージは彼女には大きすぎるみたいで、だぼっと着たジャージの袖口から華奢な手足がのぞいていた。

それから彼女は俺の傍にゆっくり歩いて来ると俺にタオルとスポーツドリンクを差し出した。


「はい、これタオル。汗拭かないと風邪ひいちゃうよ。」

「おう、ありがとうな。…えーっと、、名前なんて言うたっけ?」


俺がそう言うと「名前覚えてくれてなかったんだ、」と小さく彼女が呟いた。

それに慌てて「ごめん、俺、基本的に人の名前覚えるの苦手やねん。次聞いたらもう絶対忘れへんから」と付け加える。

すると彼女はふっ、て笑って俺のほうを見て、「。」と小さく言った。


「え?」

「あたし、っていうの」

「おお、な。おっけー、覚えた」

「違うよ村上くん、って覚えて。」


そう言って上目使いをした彼女。

意外と積極的な彼女は、きょとんとしていた俺を見てまた笑った。

それから彼女は近くにあった花壇のふちに腰を下ろす。

俺も彼女と話してみたいなと思ったから隣に腰を下ろすことにした。


「村上くんってサッカー上手なんだね」

「んー、そうなんかな。一応ガキの頃からやってるけど。サッカーに興味あるん?」

「ううん、ないよ」

「ないん?ほんならなんでサッカー部入ってん?」

「村上くんがサッカーをしてる姿を見かけて、かっこいいなって思って」

「え?俺?」

「うん。村上くんってサッカー上手いんだな、かっこいいなーって思って。あたしがサッカー部のマネージャーになろうと思ったのは村上くんがいたからなんだ」

「え?そんなん言われたら意識してまうんやけど、、、」

「意識しちゃってください」


笑った彼女の顔が夕陽であかく染まっている。

その彼女の笑顔は、今まで見てきた何よりもきれいに思えて。

胸がきゅってなるのを感じた。


そう、これが俺の初恋で。

ものの始まりなんて常に突然訪れる。


さあ、この恋の始まりを彩ろうか。





***あとがき****
村上さんの短編でございまーす!
ヒナちゃんのお話少なかったからね、増やしてみました。
腹黒ヒナちゃんではない、ピュアなヒナちゃんを書きたかったんだけど…
うーん、微妙だなぁ。なかなか上手くいきまへん。
そして短くてごめんなさい!

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