ほな明日も仕事やから。
うん、愛してるよ。
また週明けになると思う。
ごめんな。
楽しみにしとくわ。
ほな行ってきます。
―つよがり―
やっと仕事が終わって、気が付けば彼女に伝えていた時間から一時間が過ぎていた。
ここから彼女の家まで更に一時間。
「お疲れ様でしたー。」
頭を下げつつ、片手は既に携帯を探っていて。
「あ、?ごめん、今終わった。…うん、あと一時間くらいかかる。…ありがとう、ごめんな。」
ビルから出た途端、彼女に電話をかけると、今度は片手でタクシーを呼んだ。
早く、会いたい。
タクシーから見える風景は都会を彩るキラキラとした明かりで、
「この辺は明るうて星なんて見えへんわ。」
と運転手のおっちゃんは言う。
綺麗だ、と零した明かりは
何か大切なものを奪っている。
仕事やってそんなもん。
楽しくてやりがいがあって、自分の存在価値を見いだせる反面
彼女との時間を奪っている。
「あ、そこ左です。」
都会の街を抜けて、郊外の住宅街に入る。
「このマンションのしたで、」
タクシーを下りてお金を払うと、会釈をしてすぐにマンションに入った。
一分一秒でも無駄にしたくなくて。
「おかえりなさい。」
合鍵を使って玄関のドアを開けると、彼女が迎えてくれた。
「ただいま。」
久しぶりのこの感じ、心があったまる。
「ご飯食べてきたんやろ?」
「食べた、けど。」
ちょっと食べたいかも、と呟くと
良かった、作りすぎちゃったの。と彼女が笑う。
ちゃんと作ってくれたんやろ、俺のために。
「はい、どうぞ。」
「めっちゃうまそう。」
「ほんま?味は保証せーへんよ。」
だって、大好物ばっかりがテーブルに並んでる。
「あたしも一口、」
「お前、こんな時間に食ったら太んで。」
「太ったら別れる?」
「別れへんけど、」
「ほな食べる。」
そう言って皿から一口。
そのやらかそうなほっぺも、ちょっとぷにぷにしとる二の腕も、ふんわりやらしいおっぱいも、全部全部、好きやねんで。
お風呂も入って、髪をタオルで拭きながらリビングに戻ると彼女がソファーでうたた寝中。
「なー、ちゃん。」
「ん、あ、」
ゆっくり目を開く彼女の隣に無理矢理座る。自然と寄る体。
「寝てた。」
「知ってるけど。」
同じシャンプーの香り。触れ合う肌。
「ね、章大。」
「なに?」
「何でもない。」
なぁ、めっちゃ我慢してんの。知ってる?
「好き、」
彼女の甘い、恥じらいを含んだ声。
「俺も、大好き。」
今夜は愛し合おう。
世界一、幸せな二人。
「しょーた、」
「ん?」
「あいたかった、ずっと。」
「うん」
「ずっとずっと、こうやってぎゅってしてほしかってん。」
メールとか電話で言えばええのに。
つよがるのは彼女のくせで。
「あいたかった、章大。」
「俺もあいたかった。」
「寂しかった。」
「ごめんな。」
「ええねん、大丈夫。」
首に巻き付く腕の強さに、彼女の"我慢"が見えて少し切なくなる。
「いっぱいきもちくして。」
耳元で囁かれたら、もう心臓が張り裂けそうで。
「当たり前やろ。」
優しくできるか、不安になるぐらい、強い気持ちが襲う。
朝になるのが惜しいから、
今夜は会えない分まで愛し合おう。
end.
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