ねぇ、きっと
忘れられないよ。
このオレンジも
君の顔も
僕の涙も。
きっと。
*おれんじいろ*
ふたり歩く海辺。
風は冷たい。
服の袖を伸ばして
首をすくめた。
一歩先を進む君は
何度も後ろを振り返って
私がいることを確認する。
心配しなくたって
ちゃんと追いついてるよ。
「寒いな、」
そう呟いて君は
私を見つめ微笑んだ。
「うん。」
小さく頷いた私。
少し頬が温かい。
「すごい、綺麗。」
横を見ると広がる
オレンジ色。
空も、海も、
そして君も。
とても綺麗に染まるの。
「なぁ、」
急に立ち止まる君。
振り向くと、
いつもと違う。
少し、真剣な顔。
「なぁ、。」
「なに?」
そんな顔されたら
こっちがぎこちなく
なってしまう。
「好き」
耳に届いた
たった二文字。
海風が遠く運ぶ。
「ずっと、一緒にいよう」
だなんて。
君の頬が染まる。
暖かなオレンジ。
私の髪が揺れる。
優しい海風。
「はい。」
たった二文字の返事。
そして溢れた涙。
すごく嬉しかったのに
これ以上の言葉なんて
みつからなかった。
「手、握っていいですか?」
君がふんわりと微笑む。
「はい。」
ゆっくりと手を伸ばす。
繋いだ君の右手、
汗がにじんでる。
ねぇ、私の左手も
温かいでしょ?
ねぇ、忘れないよ。
君の微笑みも
僕の涙も
君の声も
波の音も
海風も
痛い程の温度も
君の体温も
頬の色も、
すべてを染める
オレンジ色も。
end.
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