「暑い」と君が呟く。
君の部屋の冷房は去年壊れたままで。

扇風機が生温い風を運ぶ。






「涼しいとこ行こう?」

そう言った君が
俺の腕を強く引いた。

「涼しいとこってどこ。」
「わかんないけど。」
「わかんねーのかよ。」

例えば、と君は続ける。
「映画館とか。」






キャミソールに汗ばんだ首筋。
君は「早く」と促す。

俺はTシャツに袖を通すと、サングラスをかけて玄関に向かった。

後ろからついてくる足音はやけに嬉しそうで、ペタペタとフローリングをかける。





「なんか観たい映画でもあんの?」

ポケットに手を突っ込む俺の腕に、君の腕が絡みつく、暑い。


「ないけど、」

無計画な君の適当な発言には慣れてしまった。







日差しがうざくて、普段通らない横路に逸れて歩く。

「ねー、どこ行くの?」
なんて君が余計にまとわりついて、俺は足を早めた。


人通りの少ない路地。
寂れた店。




「あ、映画館。」

君が呟いたのは間もなくしてからだった。






張ってあるポスターはえらく古くて、どことなく卑猥で。

暑さに逃げるようにして中に入ると、体の中心がぞくり、とするような喘ぎが響く。




中はさほど涼しくもなくて、映像は悪い、のに。
ただ音質の悪いスピーカーからは、卑猥な声が漏れていた。






君のキャミソールも、汗ばんだ首筋も。
いつしか興奮させる要素でしかなくて。








彼女の部屋に戻った俺達は
ただ夢中で愛し合った。









扇風機の羽の音。
俺の息。
いやらしい音。
君の声。

滴る汗なんて気にならない程で。







「ん、やぁ…あんっ」
「はぁ…はぁ…」
「あんっ、じん、そこっ」
「なに?ここ?」
「ひゃあっ!」
「はぁ…淫乱…。」




足を折り曲げて、いやらしいとこを露わにしながら、君は喘ぐ。


「っ、…はぁ…」
「んっ、あっ…ぁ、」



突き上げる度に君の胸が揺れる。




「ね、あんっ…じん…」
「はぁ…なに、」
「あ、んっ…やめてっ」
「なんで、…はぁ…」





動きを止めると、ゆっくりと倒される体。
ふっくらとした胸。
丸みを帯びた体。

俺の上に乗っかると君は腰を振る。




「あっ、あんっ…」
「はぁ…お前、エロ…」
「ああっ、違うもんっ…あん」
「違わねーじゃん。」


胸を掴むと泣きそうな顔して
激しさを増す。

見せ付けるように突き出す腰。



「あんっ…じんっ、だめぇ」
「はぁ…はぁ…」
「んっ、そこっ…気持ちいの。」
「はぁ…知ってる…。」
「や、も…いっちゃう」




きゅう、と君が締め付ける。
俺はそのままゴムに吐き出して、ゆっくりと君から手を離した。





「はぁ…はぁ、」





急に暑さが体中を襲って、
息切れは激しい。




扇風機は相変わらず生温い風を運んでいた。













落ち着いてきた頃、君が呟く。
「仁、たまには暑いのもいいね。」




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